肘関節周囲筋タイトネスに注目したAOL stiffness改善例
渡辺正哉*1,*3,渡辺陽子*2,西川彰*1,牛島詳力*1,川﨑一朗*1
*1(上武大学),*2(名古屋医健スポーツ専門学校),*3(名古屋市立大学大学院医学研究科)
キーワード:前斜走線維(AOL),尺側手根伸筋(FCU),円回内筋(PT),シェアウェーブ
エラストグラフィー(SWE),IASTM(instrument-assisted soft tissue mobilization)
【はじめに】投球によって生じる肘損傷では,肘への外反トルクは34.5Nm以上に達するとされ7),このようなトルク制動には肘関節周囲筋では抵抗しづらいことから尺側側副靱帯前斜走線維(AOL)が、投球時の肘外反ストレスの主要な動的安定機構の候補であるとされる1, 2).この部位での損傷は,内側型野球肘損傷(以下,野球肘)として知られ,多くの投手が経験するスポーツ外傷であり1、2),肘内側部にはタイトネスを経験する.また,このようなタイトネスに対しては,ストレッチング,マッサージといった徒手治療がおこなわれ,そして,これらの徒手治療対象は筋に対しておこなわれていると考えられる.我々は,AOL弾性とFCU,および,PT弾性との関係性を示すことができれば,肘タイトネスに対する従来の徒手治療の意義と適正を主張できるものと考え,AOL弾性とFCU,および,PT弾性をSWEによって調査した.これまで肘内側安定機構について数多く議論されており,これらの議論もふくめAOL損傷によるその弾性と肘関節周囲筋(FCU,PT))弾性との相関については明らかされていない.肘安定機構としての軟部組織の役割は,それぞれの組織単体で担っているのではなく複数の組織による複合体として機能するのではないかというのが我々の問いである.我々は,肘内側安定機構として肘関節外反制動に関係するのはAOLだけでなく肘尺側側副靱帯起始部に付着部を持つFCU,および,PTなども複合体8)として肘内側安定機構に関係するのではないかという考えに至り,AOL弾性とFCU,および,PT弾性を調査しその相関について調べた.さらに,AOL stiffnessのある症例に対しタイトネスのあるFCU,および,PTに対してIASTMを試み,AOL stiffnessの変化を検証した.
【対象と方法】大学硬式野球部の所属する投手(男,19.4±0.7歳,競技歴12.5±1.6年,投手歴6.7 ±2.7年,身長176.8±5.1cm,体重79.2±4.4kg,BMI 25.3±0.6,n=30)を対象に調査した(表1).それぞれの投球側AOL,FCU,および.PT弾性の調査を行い,さらに,この平均値72.4 −54.9未満をAOL stiffness(−)群(n=6),+ 54.9以上をstiffness(+)群(n=6)に分類し,それぞれのSWE測定をおこないそれぞれのAOLとFCU,および,PT弾性を比較した.IASTMは,川上ら8)のプロトコールに従い,AOL stiffnessが高い症例(SWE >72.4+54.9kPa,男,19.0歳,競技歴13.0年,投手歴8.0年,体重82.3,BMI 23.9,n=2)の投球側を対象に行い,AOL,FCU,および.PT弾性の調査を行った.測定は,西本ら4)のメソッドに従った.同一検者にて行い,検査肢位はGravity testに準じて前腕の自重をかけ,肢位仰臥位,肩関節外転90度,肘関節屈曲30度最大回外位とした.使用機材は,超音波診断装置(canon aplio300),および,プローブ(PLT-1005BT-14L5, 12MHzリニアプローブ)を用いた.それぞれの相関は,ピアソン積率相関係数によって算出し,IASTM施療症例2例の弾性測定値比較は,student T testにて検定し危険率5%未満を持って有意とした.
【結果】1)調査対象は,男,19.4±0.7歳,競技歴12.5±1.6年,投手歴6.7 ±2.7年,BMI 25.3±0.6であり,その中で野球肘既往を有するものは14名(47.1%)であった(表1).
2)対象群におけるAOL弾性値の平均,中央値は,72.4±54.9,62.8,AOL stiffness(−)群の弾性値平均値は,19.6±8.5,stiffness(+)群の弾性値平均値は118.1±22.3であった(表2).
表2 AOL stiffness(−)群の弾性値平均値,および,stiffness(+)群の弾性値平均値
全体 |
(−) |
(+) |
72.4±54.6 |
19.6±8.5 |
118.1±22.3 |
【考察】内側型野球肘損傷は野球肘として知られ,多くの投手が経験するスポーツ外傷であり1、2),肘内側部にはタイトネスを経験する.また,このようなタイトネスに対しては,ストレッチング,マッサージ,IASTMといった徒手治療がおこなわれており,これらの徒手治療の対象は筋に対しておこなわれているものと考えられる.本研究における対象者のAOL stiffnessの平均値は72.4±54.9であり,72.4-54.9をAOL stiffness(−)群,72.4+54.9をstiffness(+)群とし,それぞれのFCU弾性値,あるいは,PT弾性値を測定したとこAOL弾性値との強い正の相関があることがわかった(図2).このことは,肘内側安定性機構としてのAOLのみだけではなく肘内側周囲筋を含めた複合体として機能する8)ことが示唆された.そこで,肘内側タイトネスに対しIASTMを試みたところFCU, PTのタイトネス改善だけでなくAOL stiffnessも改善した(図3).今回は,2症例のみの検証ではあったため,今後,追試する必要がある.今回の結果からは,AOLに対するFCU,およびPTといった肘周囲筋が肘安定機構複合体としての重要な役割があることが示唆され,投球系スポーツにおいて生じることが考えられる肘タイトネスに対する従来の徒手治療の意義と適正を主張できるものと考えられた.
【引用文献】
1. Giovanni F. et al. JSES International , 2021
2. Tsuyoshi Tajika et al., JSES international ,2020
3. 谷口圭吾 他,科学研究費助成事業研究成果報告書,課題番号(26350619),2018
4. 西本雄飛 他,昭和学士会雑誌,2018
5. A Saito et al. J Shoulder Elbow Surg. 2018
6. Issei Noda et al. SES Int. , 2021
7. Fleisig GS et al. Am J Sports, 1995
8. Mark E et al. Curr Rev Musculoskelet, 2020
開催日時 | 〇月〇日(〇)~〇月〇日(〇)0:00~0:00 〇月〇日(〇)~〇月〇日(〇)0:00~0:00 〇月〇日(〇)~〇月〇日(〇)0:00~0:00 |
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