院長は、5月2日まで診療に携わっております．

   触診とのエコーマッチングと肩ゼロポシジョン治療

　令和元年７月21日、日本骨軟組織超音波学会に参加してきました．学会の基調講演は松本正知先生（桑名市総合医療センター　リハビリテーション科）による「解剖学と触診とエコーのマッチング（肩関節）」という表題で、肩甲骨や肩関節についての講演でした。

　私たちは，治療を行う際にまず痛みの部位の触診を行います．そのためには，患部の解剖学を理解し、患部に対して超音波エコーを用いて検査し、三次元的に理解し、その障害を受けた組織がどの程度損傷していて、どのように修復されているかを考察する。それが治療技術の向上につながるものと考えられました。

　今回の講演の内容にゼロポジションでの肩甲骨と上腕骨の位置関係について話をされていて、私はその話にとても興味を持ちました。皆さんは肩甲骨が動くということをご存じでしょうか？この扁平の形をした骨が、意外と上下左右前後と動いているのです。この動きがないと肩関節が満足に動くことは決してありません。そしてもう一つ、「ゼロポジション」という言葉を知っていますか？野球やバレーボールをやっている人は聞いたことがあるかもしれません。野球の投球動作やバレーボールのスパイク動作で腕を挙げますがこの時ゼロポジションであることが肩への負担を軽減させることにつながると言われています。では、ゼロポジションとはなんでしょう。上腕骨と肩甲棘（肩甲骨の軸）が一直線になったポジションのことです。肩甲骨には後面に肩甲棘と呼ばれる斜めに出っ張った部位があります。この軸と上腕骨は腕を挙げていくと運動軸が一致するポジションがあり、そのポイントをゼロポジションといいます。およそ１４０°挙上し軽度外転したところに存在します。ここだと上腕骨の捻りのストレスがないため肩の安定性を高めるローテーターカフ（肩甲骨周囲の筋肉，回旋筋腱板と呼ばれる）の筋緊張のバランスが保たれている状態となり力を発揮しやすいと言われています。また、こういった特性は肩関節脱臼時にもゼロポジションで牽引することにより比較的容易に整復しやすいところにもみられます。

　当院では、肩関節の治療に対して，肩甲骨の動きをチェックすることで、肩を正常に動くように働きかける治療を行っております。そして、肩甲骨の機能障害が原因と考えられるスポーツの障害（野球の投球，バレーのスパイク、テニスのサーブなど）や，四十肩，五十肩といった肩の拘縮を、ゼロポジションのチェック、フォームの改善を目指し、患者さんやアスリートの将来の傷害リスクを減らせるよう努めております。日常生活でも肩、肩周囲の痛み、違和感等感じた方は，僕たちにご遠慮なくお声を掛けてください.

下田たくみ

齋藤諒馬（24歳）H31年東海医療専門学校柔道整復科卒

（自己紹介）少年少女スポーツ全般の指導，交通事故後の相談、

野球、柔道

下田拓実（22歳）H31年上武大学スポーツ健康マネジメント学科卒

（自己紹介）アジリティー・トレーニング指導，インナーマッスル・トレーニング指導，バランス・エクササイズ指導，

バスケットボール，ロードレース，スノーボード

研究業績 （- 2019年）渡辺正哉

1. Increased blood flow in human myofascial pain syndrome and the analgesic effect of saline injection on inflammation-induced mechanical hyperalgesia in mice, M Watanabe, T Ueda, Y Miwa, Y Shibata, N Kumamoto, S Ugawa, PLOS ONE, 2019（投稿中）

 2．超音波ガイド下作製VEGF痛覚過敏動物モデルに対する食塩水注射(hydro release)の効果，渡辺正哉，理療，49(1), 47 - 56，2109

 3. 歩行，ランニングにおける接地動作，渡辺正哉, 日本病院理学療法学会，理療，48(２)，69-81, 2018

 4. 運動器の超音波観察法（実技編），渡辺正哉，澤田,他，医歯薬出版.2018

 5. 筋膜性疼痛症候群 ( MPS )（発症メカニズムとエコー検査）,渡辺正哉,三輪陽子,日本超音波骨軟組織学術研究, 17(1): 2017.

6. Distribution of ASIC4 transcripts in the adult wild-type mouse brain. Hoshikawa M, Kato A, Hojo H, Shibata Y, Kumamoto N, Watanabe M, Ugawa S, Neurosci Lett. 651:57-64, 2017

 7. 下腿三頭筋断裂既往評価における Elastography 測定の客観性 - Shear wave および Strain Elastography の比較 –,渡辺正哉，日本超音波骨軟組織学術研究,16(1):25-26, 2016

 8. 膝蓋腱炎において腱膜層構造に観察された新生血管 —超音波および組織学的検討—, 渡辺正哉，日本超音波骨軟組織学術研究，15(1):41-42, 2015

 9. Expression and regulation of Cav3.2 T-type calcium channels in peripheral nociceptive neurons during the sub-acute phase inflammatory hyperalgesia in mice., Watanabe M, Ueda T, PLOS 0ne, 0127572, 2015

 10. 膝蓋腱炎において腱膜層構造に観察された新生血管 —超音波および組織学的検討—, 渡辺正哉，日本超音波骨軟組織学術研究，15(1):41-42, 2015

 11. The role of TRPV1 channels in carrageenan-induced mechanical hyperalgesia in mice. Watanabe M, Ueda T, Neuroreport, 11;26(3):173-8. 2015

（学会発表 2018年ー2019年）

1. salineによるhydro releaseの効果，渡辺正哉，三輪陽子，第30回日本整形外科超音波学会，2018

2. 超音波ガイド下作製VEGF 痛覚過敏動物モデルに対する 食塩水注射（hydro release ）の効果,渡辺正哉,日本骨軟組織超音波学会　西日本学術西日本学術集会, 2019

 （競争的研究資金）

1. 文部科学省，研究施設助成，生物学系，超音波画像診断装置，2019年度

2. 科研費　基盤C，平成２８年度〜平成３０年度，異常血管に注目した筋筋膜性疼痛の発痛機序解明と治療への応用

3. 科研費　挑戦的研究（萌芽），令和1年度〜令和3年度，生理食塩水注射の筋痛症および炎症性疼痛過敏への適用（申請中）